オルソケラトロジー(Orthokeratology)は 特殊なカーブデザインが施されたハードコンタクトレンズを装用することで角膜形状を変形して矯正し、主に近視などの眼科的屈折異常を治療する角膜矯正療法。
(オルソは矯正、ケラトは角膜、ロジーは学問・療法の意)略してオルソケー(Ortho-K)とも呼ばれる。
オルソケラトロジーの特徴
従来の眼科的近視屈折手術と異なり非侵襲的であり、酸素透過性の高いコンタクトレンズを夜間装用することで角膜形状を矯正し、レンズを外した後も一定期間裸眼視力を維持できることが大きな特徴である。
本治療の技術は酸素透過性を高めたレンズ素材が基盤となっており、使用されるレンズについてはアメリカ食品医薬品局
(FDA) でその安全性が認められたレンズの使用が推奨されている。
世界的に本治療の有効性と高い安全性が医学会のみならず一般社会にも広く受け入れられ急速に普及しており、小児から高齢者に至るまで幅広い屈折異常患者に本治療の適応があるとされる。
その安全性から、アメリカ連邦航空局[en] (FAA)
にて良好な視力が要求される定期航空便パイロットの近視治療法として本治療が認可されていることにも代表されるように、日本でもさまざまな視力規定のある各種資格試験でも本治療が認可されている。
また従来のコンタクトレンズ装用が望ましくないスポーツ(特にラグビー、アメリカンフットボール、格闘技などの接触競技や野球、サッカーなどの砂塵の多い屋外環境下競技など)中の矯正方法としてはオルソケラトロジーが良い適応である。
オルソケラトロジーの歴史
1940年代に開発されたコンタクトレンズは1950年代に広く普及したが、患者がハードコンタクトレンズを外した後に眼鏡をかけるとかすみ感を訴えるという現象が起こった。これは角膜よりもフラットなベースカーブをもったコンタクトレンズをフィッティングさせることにより、角膜が平坦になったため、その分だけ角膜の屈折率が変化したために起こった現象であった。Dr.Wesley
らはこれを「スペクタクルブラー」と名づけ、May
や Grant などの先駆的な眼科医たちの研究や酸素透過性の高いレンズ素材の開発などによってオルソケラトロジー技術に発展することとなる。
1989年に Woldyga はより効率的なオルソケラトロジー効果をもたらすレンズデザインを開発し、この技術に革新的な進歩をもたらした。
日本におけるオルソケラトロジーの歴史
日本では三井石根(みついいわね)医師がアメリカで本治療を行い実際に視力が改善した体験をもとに2000年より同氏による日本でのオルソケラトロジー診療が開始され、日本でも急速に普及しつつある。
また三井医師の開発したオルソケラトロジーの技術を発展させたオサート(OSIERT/Ortho-K)により、重度の近視、乱視、遠視、円錐角膜、屈折術後の再近視化などの難治性、難矯正性の屈折異常に対してもその適応を広げつつある。
【出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2007/05/02
03:56 UTC 版)】