近視の原因は分かっていない。様々な説がある。
遺伝説
近視の原因として最も広く支持されている説は、主に遺伝に因るとするものである。近視の遺伝率は89%と高率であり、また近年の研究で関連する遺伝子も特定された。双生児の研究ではPAX6遺伝子の欠陥が近視と関連しているようである。この説では、発達上の問題から眼球の奥行きが若干延長され、映像が網膜上でなく網膜の前方に結するようになるとされる。近視は通常8歳から12歳までの間に発現し、殆どの場合青年期を通じて徐々に進行し、成人になると頭打ちになる。遺伝説では、何歳のときに近視になり始め何歳までにどこまで進行するかが生まれつき決まっていると考える。遺伝要因は、他の生化学的要因からも近視の原因となりうる。例えば結合組織の弱さなど。
環境説
専門家の間では支持されないが、一般に広く信じられているのは、水晶体の厚みを変える毛様体の筋力の衰えによるとする説である。衰えた毛様体筋では遠方視に合わせて水晶体を調整する事ができず、結果遠方のものがぼやけて見える。この説では毛様体筋の衰えは携帯電話やPCなど近業のし過ぎが原因であるとされる。目が滅多に遠方を見ないので、毛様体筋が使われず、従って衰える。眼鏡やコンタクトレンズが毛様体筋の働きを肩代わりするので、ますます筋力が衰え近視が進行するとこの説の支持者は主張する。代わりに、様々な目の体操で筋肉を鍛えるとよいとする。
この説の泣き所は、主流の眼科学や薬学では毛様体筋は近くを見るときに収縮し、遠くを見るときには弛緩するとされる事である。他の説では、過剰な近業によって眼が痛められ近くを見る状態に凝り固まってしまったものなので、眼の体操で筋肉をほぐして遠くを見られるようにするという。
遺伝・環境複合説
毛様体筋説が正しいかどうかはさて置き、遺伝率が高いからといって、必ずしも環境要因や生活態度が近視の発生に関係ないとは言えない。遺伝率の高さは単に、特定の時代の特定の集団の変異は遺伝に因るものであるという事に過ぎない。例えばTVやコンピュータの発明により環境が変われば遺伝率は高いままにせよ、近視者の率は変わり得る。
栄養説
2002年の報道(英語)では幼年期のパンの摂り過ぎ、或いは炭水化物の摂り過ぎによる慢性の高インスリン血症が近視の原因かもしれないと指摘している。この資料(英語)に纏められているように他の栄養素も近視の原因とされている。
照明説
就寝時に電灯を点けたままにする習慣のある家庭に育つなどして、幼年期に長時間網膜が光に曝されると近視が発生するとする説。近代の近視の増加をうまく説明できる。
睡眠不足説
成長期に睡眠が不足すると近視になるとする説。
徴兵説
遺伝説の補足として、戦時に視力の良いものから徴兵されて死亡率が高まり、逆に近視者は徴兵検査に不合格になるか合格しても後方に配置されて死亡率が低かったことから、近現代の近視の増加を説明するもの。
体格向上説
国民の体格が向上すると、その分眼球も大きくなり、軸性近視が増えるとする説。
農耕民族説
遺伝説の一種で、日本人は農耕民族なので狩猟民族に比べて遠くをはっきり見る必要が少なく近視の遺伝子が淘汰されなかったとする説。日本の農耕の歴史は諸外国に比べてむしろ浅いという欠陥を持つ。
【出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』】