弱視(じゃくし)は、目の障害の一つ。目の機能が弱く、物がよく見えない状態をさす。
定義
一般的に定義は曖昧で、眼科医でもその見解は分かれる。具体的な判定例としては、幼少期の健康診断で眼鏡・コンタクトレンズによる矯正視力が0.3未満の場合、弱視と判定する(ただし発見が早い場合は視能訓練により視力の向上が望める可能性がある。詳しくは後述)。成人の場合は矯正視力が運転免許取得の条件の一つである0.7未満の場合を弱視と判断する医師もいる。
また視力が悪くなくても、視野が狭くなったり、夜盲症を生じていたり、眼振がある場合も弱視と判断する場合もあり、その基準は千差万別である。いずれの場合でも眼鏡・コンタクトレンズによる矯正効果が低い場合は弱視と判断されるといってよい
種類
弱視の原因は様々である。以下に有名な原因を列挙する。
・斜視弱視
・不同視弱視(左右の屈折度の差がありすぎるとき)
・屈折異常性弱視(遠視や強度近視)
・視性刺激遮断弱視(白内障、眼瞼下垂、眼帯の使用)
・微小角斜視弱視(傍中心窩固視)
・経線弱視(乱視)
大雑把にいってしまうと先天的または後天的な要因で乳幼児期に適切な光刺激を受けることができないと視力は十分に発達しないということになる。光刺激を妨げるのが白内障といった障害である。また両眼の視覚情報があまりに異なると片方の視覚刺激を抑制する機能が人体にあるため、抑制が起こった眼では視力の発達が不十分となり弱視となりえる。眼科学では網膜から視中枢までの神経路に形態的異常があるため見えない場合は厳密には弱視とは言わない。形態的異常がなく発達障害でおこった場合を弱視と定義している人が多い。しかし、幼児期なら弱視も治療ができることなどから、見解にばらつきが起こっている。
治療
0〜7歳くらいまでに(3歳児健診などで)発見できれば弱視は改善しやすいが、大人の弱視は目の機能が未発達のまま完成しているため難しい。個人差があるが、5〜6歳までであれば眼鏡や視能訓練などにより殆どの回復は可能である。
左右の視力に格差がある弱視にはアイパッチ治療などがある。
幼児期
「不同視弱視」などの例では、片眼が見えていないのは生まれつきであるために、本人も親もそのことに違和感を感じず気付かないまま成長してしまうことが多い。そのため、弱視であることを小学校の入学健診ではじめて知る場合も少なくない。治療の有効年齢は5〜6歳までなので小学生からでは治療を受けても一生弱視になる可能性が非常に高くなる。
保険機関の対応
弱視の治療には眼鏡を使用するのが殆どであり、いわば眼鏡は治療用器具である。当然、弱視が完治すれば必要なくなるが、その過程では回復度合いを見てレンズの度数を何度も変える必要がある。乳幼児期は眼鏡等の扱いが不慣れなため眼鏡を壊してしまったり、なくしたり、レンズが傷ついたりと、何度も買い換える必要があり、また乳幼児用のものは特殊レンズであるため通常価格の数倍の金額で購入しなければならなかった。
2006年4月より乳幼児の弱視治療の眼鏡等(コンタクトレンズも含む)に対する保険適用が実施されているが、それまでは保険者の判断により保険適用にばらつきがあり、保険適用される例は極めて少数であったため、弱視の子供を持つ親の負担は大きかった。
弱視治療の眼鏡等の保険適用が実施されたとはいえ、適用される年齢が9歳まで、適用回数も年齢によって年1〜2回に限られるほか、不同視弱視治療に必要なアイパッチには適用されないなど、現状に即していないと指摘する声もある。さらに無条件適用が実施される2006年4月以前に適用されていた人の場合、眼鏡等代金のうち、一般的な医療費と同じ70〜80%が支給されていたが、度数変更などで新たに適用を受ける場合、新制度では支給額の上限が決められているため、眼鏡等の金額によっては、これまでの支給額より下回る可能性もある。
社会生活
日本の視覚障害者の中では弱視が一番多く、7〜8割。矯正ができないため日常生活を送る上で支障が多いが、その割に障害者としての認知度は低いといわれる。
生活には拡大鏡などを使用する。パソコンにも弱視者の使用に配慮し、拡大鏡機能がついているオペレーティングシステムがある。
テキストを音声で読み上げるアプリケーションも存在する。
【出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』】